【ルーサー衝撃・続く】
孤独。
ルーサー死去の衝撃は続く。イギリス人のソウル・ミュージック・ジャーナリスト、デイヴィッド・ネイサンが長文の追悼文を書いた。
http://www.soulmusic.com/luthervr.htm
ルーサーはアトランティック・レーベル傘下コティリオン・レーベルからグループ「ルーサー」として76年にデビュー。その時にネイサンがインタヴューをし、それ以来、仕事面でもプライヴェートでも二人は親しくなった。ネイサンがその30年近いルーサーとの思い出を語ったもの。
グループ、「ルーサー」が2枚のアルバムを出した後、契約がなくなり、一時期ネイサンはイギリスのレコード会社にルーサーのデモテープを売り込んだことがある。だが、それを聞いたディレクターは、イギリスのマーケットには「アメリカすぎる」と判断し、売込みを断った。
その後、ロバータ・フラックのツアーで、ロバータのマネージャーと知り合い、その人物がエピックのディレクター、ラーキン・アーノルドを紹介してくれた。アーノルドは、すぐにこのテープを気に入り、契約。そこで『ネヴァー・トゥ・マッチ』が生まれた。ここに収録された「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」を聴かされた時のネイサンの驚きは大変なものだった。ルーサーにとって、ディオンヌ、アレサ、ダイアナ・ロスは3大お気に入りのシンガー。そして、そのうちのひとりディオンヌの作品をカヴァーしたのである。
ルーサーも生涯独身で過ごした。デイヴィッド・ネイサンも独身ということで、人生について、恋について、独身であることについて、パーソナルな会話を何時間もしていたようだ。一時期、偶然にもネイサンとルーサーがニューヨークの同じアパートに住んでいたことも、二人を親しくさせた。
『ネヴァー・トゥ・マッチ』以降、ルーサーはさらに豪華なアパートに引越していったが、新作がでると、まっさきにネイサンに聞かせていた。
ルーサーは、いつでも、生涯のパートナーを見出したいと思っていた、という。つまり、結婚したいと思っていたのだ。彼は、自分の体重(太っていること)が、恋のじゃまになると思っていた。そこで、恋をすると、あるいは、好きな人ができると、痩せる。だが、その恋が成就しないとなると、やけ食いでまた太ってしまうという。その体重の増減は5-60キロあった。それは、彼の歴代のアルバムのジャケットを順に並べてみれば、明らかだ。痩せている時と太っている時が実に極端なのである。
また、彼の兄弟、親ともに、糖尿病を患っていた。糖尿病の家系なのだろう。それと体重も関係していた。そして、そこから心臓への負担があった。
ルーサーにはこんな現実があった。完璧なライヴをやって、何万の人を喜ばせても、ホテルの部屋に戻ってくれば、たったひとりだ。そして、そこで彼を待っているものは食べ物だけ。どうしても食べてしまう。
大学時代、彼はしばしニューヨークを離れミシガン州に行くが、その時も彼は孤独だった。シャイな彼は友達もできずに、いつもヘッドフォーンでレコードばかり聴いていた。その頃聴いていたのが、アレサ・フランクリンであり、ディオンヌだった。同級生がガールフレンドを作ったり、パーティーに興じている頃、彼はレコードを聴いていた。まさにこの頃から彼の人生はヘッドフォーンの中にあった。
孤独というキーワードは、ルーサー・ヴァンドロスの人生の中に常に寄り添っていた。しかし、その孤独さが、体重を増減させ、また、彼の唯一無比の悲恋ソングや叶わぬラヴソングを作る原動力となったにちがいない。
傑作アルバム『ネヴァー・トゥ・マッチ』(1981年)のアナログではB面の最後を飾ったのが、前述の「ア・ハウス・イズ・ノット・ア・ホーム」だった。バート・バカラック&ハル・デイヴィッドの名曲だ。恋人が去った後の家は、もう家じゃない、家庭ではない、という歌。「そこに椅子があっても、家ではない。家が(形として)あっても、そこに家庭はない。部屋があっても、しょせん部屋はただの部屋。部屋は家ではなく、家があっても家庭はない・・・」 ルーサーの部屋は、家庭にはならなかった。
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■ルーサー・ヴァンドロスの『ネヴァー・トゥ・マッチ』のライナーノーツを近日中にアップします
■ルーサー・ヴァンドロスに関するソウル・サーチン日記
2003/04/25 (Fri)
Luther Vandross’ Condition Critical, But Stable
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200304/diary20030425.html
倒れた時の第一報。
2003/05/05 (Mon)
Luther Is Still Alive
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200305/diary20030505.html
2003/05/15
Luther Still Unconcious: But Mother Confident of Recovery
ルーサー、依然 昏睡状態。母親は回復に自信
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200305/diary20030515.html
2003/05/22 (Thu)
Aretha sung “Amazing Grace” for Luther
アレサ・フランクリン、「アメージング・グレイス」で全快の祈り 捧げる
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200305/diary20030522.html
2003/05/29 (Thu)
Promotional Talk
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200305/diary20030529.html
2003/06/13 (Fri)
Luther is out of his coma?
昏睡状態から脱す
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200306/diary20030613.html
2003/06/14 (Sat)
Now it’s official: Luther is out of ICU
集中治療室を出る
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200306/diary20030614.html
2003/06/20 (Fri)
Luther’s Album Made No.1 For The First Time In His Life
ルーサーの新作、アルバム・チャートに1位初登場
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200306/diary20030620.html
2003/06/21 (Sat)
Dance With My Father: Complete Japanese Translate Version
「ダンス・ウィズ・マイ・ファーザー」完全訳詞
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200306/diary20030621.html
NO.326
2003/07/19 (Sat)
The Power Of Love For Luther Vandross
ビデオに友人シンガーたち登場
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200307/diary20030719.html
2003/08/13 (Wed)
Luther: Because It Has His Soul In His Song
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200308/diary20030813.html
2003/09/05 (Fri)
Luther Live Album Due Next Month
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200309/diary20030905.html
2003/11/18 (Tue)
Luther Vandross’ First Live Album Ever: Love Story For 75 Minutes Long
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200311/diary20031118.html
2004/02/11 (Wed)
Another Side Of “Dance With My Father”
「ダンス・ウィズ・マイ・ファーザー」もうひとつの物語
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200402/diary20040211.html
July 02, 2005
Luther Vandross Died At 54
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_07_02.html
July 03, 2005
Luther Vandross Died At 54: Reunited After 46 Years With His Father
http://blog.soulsearchin.com/archives/2005_07_03.html
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ENT>OBITUARY>Vandross, Luther/2005.07.01(54)