【ミュージカル『ウィ・ウィル・ロック・ユー』】
狂喜乱舞。
あの新宿歌舞伎町のコマ劇場が変身した。内装を大幅に変え、ステージを扇型に囲むミュージカル向きに客席が作られた。収容人数は1900余。前の席と微妙に席位置がずれているため、前の人の頭がそれほど気にならない。欧米のミュージカル・シアター、コンサート・ホール的な雰囲気だ。また、いくつも食べ物飲み物を出すカフェがあり、そのあたりも考えられている。
さて、そんなコマ劇場に今回イギリスで大ヒット中のミュージカル『ウィ・ウィル・ロック・ユー』がやってきた。このミュージカルは、イギリスの人気グループ、クイーンのヒット曲を多数使ったロック・ミュージカルで、2002年以来イギリス、オーストラリアなどで上演されロングランになっているもの。日本でも5月末から8月いっぱい長期公演(計103回)が予定されている。今回の来日は、オーストラリア・ヴァージョンのキャスト。
結論から言うと、かなり楽しめた。舞台もよくできているし、ダンサー、シンガーたちもしっかりパフォーマンスを見せる。なにより、場面転換がたくさんあって、飽きさせない。クイーンのファンだったら、流れる曲はみな知っているだろうし、かなり楽しめるのではないだろうか。アバ・ファンが『マンマ・ミーア』をリピーターとなって見るのと同じようになるだろう。
ストーリーは単純明快。近未来2055年が舞台。この時代はコンピューターが世界を支配し、あらゆる人間がクローンのようになっていた。音楽はコンピューターが作るような画一化されものばかり。楽器の使用は禁止され自由に音楽をすることができなかった。だが、そんな状況で反体制のボヘミアンたちは、密かに音楽を作ろうとしていた。隠されたギターはどこにあるのか。そのギターを弾くべきスーパースターは登場するのか。ボヘミアンが言う。「今の音楽(2055年の音楽)には、心も魂(ソウル)もない」。未来地球にソウルは蘇るのか。
ストーリーもシンプルだが、脚本がよくできている。あらゆるところに、さまざまな音楽やミュージシャンの名前、顔写真などがでてきて、ロックの歴史も俯瞰(ふかん)する。27人の出演者の中で、「俺はクリフ・リチャード」、「俺はエルヴィス・プレスリー」などに混ざって、「俺はジェームス・ブラウンだ。ゲロッパ」というのまででてきた。さらに、日本向けのちょっとしたコネタも挟み込み、笑わせてくれるところもある。
正面にステージがあり、その左右少し上のところにバンドピットがあり、そこで8人編成のバンドが演奏をしている。また字幕は正面ステージの左右の端にある。比較的文字が大きいのと、舞台がそれほど大きくないので、見やすい。以前のミュージカル『ビッグ・リヴァー』などの字幕と比べるとずいぶんと見やすかった。
テレビモニターとの連動が実にうまく、最近のロック・コンサート並みの使い方だ。(ロック・コンサートがミュージカル並みになったというべきか)
途中15分程度の休憩をはさんで、約2時間50分。きっとクイーンの熱心なファンだったら、狂喜乱舞するだろう。パフォーマーたちは、観客をロックし、観客は彼らに見事にロックされた。ショウが終わり歌舞伎町の喧騒の中に出ると、北朝鮮との試合に勝ったことを喜ぶ人たちの狂喜乱舞に包まれた。
『ウィ・ウィル・ロック・ユー』公式ウェッブ
http://www.wwry.jp/
ミュージカル『ウィ・ウィル・ロック・ユー』、2005年5月27日から8月24日(水)まで公演。新宿コマ劇場。
(2005年6月8日水曜、新宿コマ劇場=ミュージカル『ウィ・ウィル・ロック・ユー』)
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