East Meets West At East: Kin Agun Plays China Yang Quin

【揚琴(ようきん)・悠久の調べ~金亜軍さん】

悠久。

「今日は後でゲストがあります。中国の楽器、揚琴(ようきん)をプレイする金(きん)さんという方をご紹介します」 深町さんが、途中でそう言った。ピアノの深町純・月例会も数えること第52回。毎回ではないが、時々、様々なゲストが登場し、普段お目にかかれないようなアーティストに遭遇するチャンスがあって興味深い。

セカンドセットが始まる前、その金さんが揚琴という楽器をピアノの前にセットしていた。けっこう大きい。ちょっと持ち運びは気軽にはできない。横1メートル、縦50センチ、高さ1メートル弱くらいの箱に何十本(実際は150本以上)ものスチール製の弦が張られている。そして、それをバチというかスティックのようなもので、軽く叩いて音を出す。そのバチは、竹でできているそうで、ちょっと振るだけで、うまくしなる。ジャンルで言うと、打弦楽器(だげん・がっき)というそうだ。つまり、弦を叩いて音を出す楽器。

金さん(男性)は「私は、深町さんのピアノに恋してます」と告白し、少し楽器の説明をしてから、演奏を始めた。彼が叩いた瞬間、その音色に恋した。(笑) いやあ、これはいい音だ。虜になった。なんとも文字にしにくい美しい調べである。一番近いのは琴だろうか。あるいは、チェンバロあたりか。演奏方法は鉄琴・木琴を叩くようにして行うので、不思議な感じ。低音の部分の響きはギターのような、ベースのような、時に三味線のような音にも聴こえる。

1曲ソロの曲を演奏し、次に深町ピアノとデュエットを聴かせた。これは、タイトルは「薔薇の花のみっつの願い」。深町さんが、曲について説明してもらいましょう、というと、金さん、いきなり北京語でしゃべり始めた。ひとしきり終えると、拍手がきて、日本語での解説が。

「薔薇には、みっつの願いがあります、という曲です。ひとつは、時々、この美しい薔薇を見に来てください。ふたつ、これを摘まないでください。みっつ、これを忘れないでください」 ほ~~。見に来て、摘まないで、忘れないで・・・。これがみっつの願いか。その解説を聞いただけで、期待に胸が膨らむ。

ピアノのイントロから始まったこの曲は、ゆったりとした「悠久(ゆうきゅう)」という言葉がぴったりの美しい曲だ。すばらしい。これは、黄自(ワン・ツゥー=聞き書きのため、ひょっとしたら違っているかもしれません)という近代中国音楽の作曲家の作品で、彼は40代で他界したが、様々な美しい作品を多数残した。1900年代の人だという。「薔薇の花のみっつの願い」は、まさにイースト・ミーツ・ウェストという感じだった。3曲目は「彩雲追月」(これも聞き書きなので、まちがってるかもしれません。確認するのを忘れました)という曲で、途中ちょっとテンポが早くなり、リズミックになった。

演奏が終った後、金さんに話を聞いた。それによると、この楽器は約400年前にヨーロッパから中国に伝わったが、今では中国ではかなりポピュラーな楽器になっている。弦の数は150以上で、音階はピアノが88だとすると50以上の音がでる。これに、チューニングによって半音の上下があるので、かなりの音の数がでる。いくつかの奏法があるが、基本的には叩けば音がでるので、簡単ですよ、とのこと。

ところが、弦のところには、何も印がないから、どこが「ド」の音かまったくわからない。「試しに、ドレミファソラシド~って叩いてもらえますか」 「それが一番難しいですが・・・(笑)」といいつつも、さらっとやってくれた。回りにいた人たちから「おおおおっ」の歓声。楽譜は、普通の五線譜のものでいいという。中国音楽の5音階以外の音がはいってもぜんぜんいいそうだ。

では、「さくらさくら」のさわりでもできますか、と言ったら、さらっとやってくれた。回りから拍手。これはしかし、いい音。

この楽器、ヤマハでそれほど高くなく売り出すそうだ。金さんは、この楽器の弾き方も教えるという。

彼に揚琴で「ジョージア・オン・マイ・マインド」を弾いてもらったら、どうなるのだろう。

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金亜軍さんのウェッブ(揚琴についての簡単な説明などもあります)
http://www.youkin.com/~kin/

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(2005年4月30日土曜・恵比寿アートカフェ=深町純・ライヴ第52回、金亜軍・ライヴ=飛び入り)

ENT>MUSIC>LIVE>Fukamchi, Jun / Kin Agun

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