【輝く素朴さ:ノラ・ジョーンズ・ライヴ】
素朴。
なぜ僕がノラ・ジョーンズが好きなのか、ライヴを見ていてわかった気がした。まずなんと言っても彼女の声が好きだということ。これは何物にも代え難い。別にそんなにソウルフルな声でもないのだが、でもハートウォーミングな温かみのある声に惹かれる。聴いていてまったく不快感がない、落ち着く声なのだ。そこがいい。
もうひとつ。彼女がルーツミュージックをものすごく大切にしているということ。特に南部の音楽、南部ロック、ブルース、カントリーなどを自然に彼女は体内にいれて、自分の物として消化して排出している。そうしたルーツものは、僕も元々好きなので、それらが感じられるから、きっとノラのことも好きなのだろう。そこがいい。
南部のロック、南部のソウル、南部のカントリー。みんなどれも都会的に洗練されてはいなくて、どこかだささが残っていて、でも温かい。生活感に根ざしていて、まちがっても打ち込みなどで音を出さない。楽器の早弾きなどで技術を競うなんてこともなく、そこそこシュアに音を出す。リアルミュージシャンの生身の音が、そっとでてくる。そんな感じだ。そこがいい。
彼らは、メンバーがみんな仲良しの、例えば、大学の音楽サークルでやっているバンドのように映る。本来だったら、5-60人も入ればいっぱいになる小さなライヴハウスでやっているような仲間が、ノラのCDの大ヒットによって、5000人ものキャパシティーの大きな会場でやることになってしまっただけのことだ。5000人を相手にしようが、50人を相手にしようが、彼らがやることはいつも変わらない。そこがいい。
その不変なところがいい。その素朴さがいい。そのグリッター(光輝くけばけばしさ)がまったくないところがいい。素朴さこそが、見事に光り輝いていていい。(All that simplicity is gold)
ドラムス、ギター2人、ベース、コーラスにパーカッション。これにノラが歌とピアノ、キーボード。最近は、レイ・チャールズのカントリーでしばし、個人的にもカントリーへのなじみがあったためか、ノラのカントリー・フレイヴァーなサウンドも、違和感なく楽しめた。やはり、前述の「南部の音楽」というキーワードがいいのかもしれない。ブルージーでスワンピーで、カントリーで、どこかに一粒のソウルがある。そこがいい。
アルファー波がたくさんでて、しばしノラの歌声を子守唄にしてしまったが、彼女は自分が出したアルファー波の大きさを感じたのか、途中のトークで「みんな寝てるの? ずいぶん静かね。大丈夫?」と観客に声をかけた。空気を読むのがうまくていい。
最後のバンドの「ライフ・イズ・ア・カーニヴァル」はえらくよかった。こういうテンポのある曲をもう少し前半で挟めば、全体的な単調な流れにメリハリをつけられると思う。ノラのライヴはまあ、こんな感じでいいのだろうが、もう少しテンポのある曲をうまくいれるとなおいい。
個人的には、デューク・エリントンの「ドント・ミス・ユー・オール」(2作目に収録)とスタンダードの「ニアネス・オブ・ユー」(1作目)の2曲を歌ってもらえなかったのが、ひじょうに残念。歌ってくれたら、もっといい。
初めて日本で披露するという新曲(下記セットリスト15曲目)は「ロージー」というタイトルだ。ノラがローズ(キーボード)を弾きながら歌った。これもいい曲で、一度で覚えた。
ノラの歌声を聴いていると、アメリカの古き良き時代の「音楽の良心(conscience of music)」のようなものが強く感じられる。そこに「グリッター」(光輝くもの、けばけばしさ)は必要ない。そこがいい。
[タイトルのAll That Simplicity Is Goldは、All That Glitter Is Not Gold=
すべての光輝く物が必ずしもゴールドではない=をもじったものです]
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【ノラ・ジョーンズ関連記事】
ノラ・ジョーンズ・ライヴ『ヴェイカントな夜』(2002年9月7日)
https://www.soulsearchin.com/entertainment/music/live/jones20020907.html
2002年の正式な日本初ライヴにインスパイアーされたショートストーリー。
2003/02/26 (Wed)
Experience you’ll never go through again
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200302/diary20030226.html
2002年4月の初来日時のショーケースライヴの模様を回想。
2004/01/20 (Tue)
Unchangeable Universality: Norah Jones Live @ Spiral Hall
https://www.soulsearchin.com/soul-diary/archive/200401/diary20040120.html
2004年1月のショーケース・ライヴの模様。
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【ノラ・ジョーンズ CD、DVD】
1) 『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』
2) 『フィールズ・ライク・ア・ホーム』
DVD
1) 『ライヴ・イン・ニュー・オーリンズ』
2) 『ライヴ・イン 2004』
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【Setlist】
2005.04.18. Live At Kokusai Forum Hall A
show started 19:15
01. Turn Me On (“Come Away With Me”-1st album)
02. Those Sweet Words (“Feels Like Home”-2nd album)
03. Nightingale (“Come Away With Me”-1st album)
04. What Am I To You? (“Come Away With Me”-1st album)
05. I’ve Got To See You Again (“Come Away With Me”-1st album)
06. She (Gram Parsons)(“Live In 2004″DVD)
07. In The Morning (“Feels Like Home”-2nd album)
08. Carnival Town (“Feels Like Home”-2nd album)
09. Painter Song (“Come Away With Me”-1st album)
10. Humble Me (“Feels Like Home”-2nd album)
11. The Long Way Home (Tom Waits) (“Feels Like Home”-2nd album)
12. Don’t Know Why (“Come Away With Me”-1st album)
13. Creepin’ In (“Feels Like Home”-2nd album)
14. Above Ground (“Feels Like Home”-2nd album)
15. Rosie (new song)
16. Sunrise (“Feels Like Home”-2nd album)
17. Come Away With Me (“Come Away With Me”-1st album)
18. Life Is A Carnival (The Band) (“Live In 2004″DVD)
Enc. Lonestar (“Come Away With Me”-1st album)
show ended 20:49
(2005年4月18日月曜、東京国際フォーラム・ホールA=ノラ・ジョーンズ&ハンサムバンド・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Jones, Norah & The Handsome Band
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