異色の女性ファンク・アーティスト、ミシェル・ンデゲオチェロの久々の来日ライヴ。日本がトルコに負けたその日に気持ちを取り直す意味で見に行きました。
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『人を目覚めさせる鳥』
覚醒(かくせい)。
はじけるダブル・ベースと乾いた、しかし抜群のリズム感のあるドラムスによって打ち出される強烈なビートは、ぬるま湯の音楽に浸り切った者を、完璧に覚醒させる。そして、ステージが続けば続くほど、そのリズム隊の強烈さに、麻薬的な快感を覚えるようになった。
スキンヘッドの女性ベ-ス奏者、ミッシェル・ンデゲオチェロの数年ぶりの来日ライヴ。前回ライヴは、内容はよかったものの、池袋のホールでほとんど観客がいないという、状況的にはかなりお寒いものだった。今回は、日本がトルコに負け、しかも、雨も降っているという悪条件ながら、そこそこの入りを見せた。
ある時は淡々とベースを弾き、歌を歌い言葉を語る。サウンドはファンクをベースにジャズと若干のR&Bが融合。ラップのような語りがあるが、それはラップではなく、モノローグ、あるいは、ポエトリー・リーディングのような言葉に息吹を与える種類のものだった。
痛烈に感じられたのは、内省的で、自己完結型のアーティストだということ。すべてを自分でやり、問題さえも自分で解決してしまうという姿勢だ。それゆえか、彼女が、観客に話しかけることは、非常にまれだ。それでも、一度だけ観客に向かって話しかけ、私たちには「カルチュアル・チャネリング(文化的伝播)」がお互い必要だ、と語った。
エンタテイナーというものとは程遠く、自身の主張をもの静かに、しかし、時に激烈な音楽とともに語る表現者、アーティストとしての佇まいをみせていた。ンデゲオチェロは、スワヒリ語で「鳥のように自由に」という意味。そして今、「人を目覚めさせる鳥」の意味が加わった。
6月18日(火曜)東京
ブルーノート・ファースト・ステージ
文・吉岡正晴
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