神様。
映画『レイ』の試写会にピーター・バラカンさんがいらしていたのでいろいろ話をした。映画が始まる前は、ピーターさんはちょうど出たばかりのボブ・ディラン著の自伝を読んでおられた。これまでディランの著作はいろいろあるが、もちろん、自分で書いたものは初めてなので、ひじょうにおもしろいそうだ。日本のアマゾンで1日で来たという。
レイ・チャールズが死去したあとのジョークを話してくれた。ちょうどブラザー・レイが死去したのは、レーガン元大統領の死去とほぼ同じ頃だった。そこで、二人がほぼ同時に天国に行った。天国に行くと、いろいろな有名人たちの豪邸が立ち並んでいた。エルヴィスや、マーヴィンやら、いろいろだ。そこに立派な家があり、それがレーガンの家だった。すると、さらに丘の一番上にもっと超豪華な邸宅があった。それを見た人が聞いた。「あれは、誰のうちですか? なんであんな上にあって、しかもひときわ大きいんですか」 「なぜなら、あれは神様が住んでいるからだ」 「神様って?」 「レイ・チャールズだよ」
ちょっと、聞き覚えなので、違うかもしれません。違ったらすいません。欧米で出回っているジョークのようで、いくつか違うヴァージョンもあるかもしれないが、要はレイ・チャールズはレイ・チャールズひとりしかいない、ということでもある。レイは天国でも神様だというあたりがおもしろい。(ま、ギャグを解説するのもヤボというものだが)
映画が始まる前には、そういうわけでお話をしていたので、映画についての資料をまったく読まずに見ることになった。さて、映画が終った。僕はなかなか椅子から立ち上がれなかったが、とりあえず、「いやあ~、よかった」。
ロビーにでると彼も若干興奮気味。こっちもテンション上がっているので、立ち話が止まらない。僕「いやあ、ジェイミーがすごいですねえ」 「ほんと、すごいねえ」 「あと編集が素晴らしい」 「素晴らしいね。彼にとって、あの事件というのはあんなに後をひいていたの」 「そうみたいですねえ。自伝にもそう書かれてるんです」 「曲は何曲か、レイがこの映画のために再録音したそうね」 映画の宣伝担当「そうなんですよ。レイが何曲か録音しています」 ピ「衣装も素晴らしかった」
僕「いやあ、ほんと単なる音楽映画か、ブラックムーヴィー的に思ってたけど、とんでもないですね。言い方悪いけど、いい意味で『ハリウッド映画』ですねえ。これは絶対アメリカで受ける。あとは日本でこういうミュージシャンを扱った映画がどれくらい受けるかですねえ」 ピ「いやあ、そんなネガティヴなこと言っちゃだめだよ(笑) なんてったって、レイ・チャールズなんだから。完璧に文句のない映画だけど、もしひとつだけ文句をつけるところがあるとすれば・・・(しばし考えて) アレンジャーのハンク・クロフォードだっけ、彼がでてこないところかなあ」
「あと、いろんな曲がでてきて、楽しいなあ。曲の使い方、抜群にうまいですね」 「そうだ、でてこなかったけど、『バステッド』が、逮捕されたシーンなんかでかかっていたらよかったね」 「ああ、ほんと、そうですね」
というわけで、このサントラ『レイ』も1月に日本発売される。輸入盤を入手したが、なんとここには『ライヴ・イン・ジャパン』の音が3曲入っていた。「愛さずにはいられない」「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」「我が心のジョージア」という、まさに映画中でもハイライト的に使われる作品だ。このサントラ収録曲と映画で使われたテイクが同じなら(おそらく同じはず=確認しますが)、映画『レイ』には、75年11月の日本人観客の拍手も入っているということになる。ワオ!
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