肥沃(ひよく)。
3本の羽根を頭につけ、ユニークな民族衣装に身を包んだリードシンガーは、ナヴァーシャ・ダーヤ。そしていかにもローカルバンドらしいメンバーがステージで準備を整える。ライヴを見るのは初めてだが、これは期待できそう。
ドラムス、ギター、パーカッション、トランペットとサックス、キーボードにコーラス2人、そして、ナヴァーシャの計9人のステージ。なぜかベースがいない。ベース部分はほとんどキーボードが担当している。日本ではほとんど無名のボルティモア出身のロウ(生の)・ジャズ・ファンク・グループ、ファータイル・グラウンドのライヴ。グループ名の「ファータイル・グラウンド」とは、肥沃な土地、といった意味。グループ名は中身を表していた。
一言で言えば、ものすごく70年代的なバンド。まさにオールドスクールな土着的ファンク系のバンドだ。最初に思い出したのが、ちょっとラテン系もはいっていたマンドリルというファンク・バンド。ファータイルたちもファンクをベースにジャズ、ラテン、アフリカ、レゲエ、ニューオーリンズ的なサウンドをまぶす。音楽的多様性がじつにある。それもかなりのオールドスクールスタイルで。この音楽的多様性をしてファータイル・グラウンド(肥沃な土地)と名乗るのはひじょうに納得がいく。
ゆったりとしたグルーヴ感のある1曲目「チェンジング・ウーマン」から、アップテンポの2曲目「リヴィング・イン・ザ・ライト」あたりで、充分このバンドのコンセプトはわかった。ヴォーカルのナヴァーシャの声は、エリカ・バドゥ、あるいはレイラ・ハザウェイのような低い落ち着いた声で魅力的。
曲によって、それぞれの楽器のソロを聴かせる部分もある。ちょっとチャーリー・パーカー似のサックスに、エディー・マーフィーかアイザック・へイズ似のトランペットの2人のホーンセクションがかなりのアクセントをつけている。各個人がとりたてて凄腕のミュージシャンということではないが、サウンドとしてひとつになると方向性がしっかりして、バンドのコンセプトが見事に浮かび上がる。70年代にジャズ・ファンク・グループという言葉で表されるバンドがあれば、こんな形になっていただろう。
70年代のジャズ・ファンク・バンド。もっとプロモーションすれば人気がでてもまったくおかしくない。少なくともワイルド・マグノリアスくらいまでは行くのではないか。メンバー紹介でキーボードのジェームス・コリンズが彼女の夫だと言っていた。なるほど夫婦ファンクバンドか。
途中でのインストになり、ナヴァーシャがそのリズムにあわせて踊っているところなど、何かヴードゥーの儀式かと思わせるような独特の雰囲気を醸し出していた。
アンコール手前の曲が終った後、彼女は叫んだ。「ピース、ビー・ナチュラル!(ピース、自然にふるまいましょう)」 それにしてもこのナチュラルなファンクをベースとした肥沃な音楽的土壌はいい。
ブルーノートのウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20041029.html
グループのオフィシャルサイト(英語)
http://blackoutstudios.com/
ファータイル・グラウンドのメンバーが、31日(日曜)『ソウルブレンズ』(インターFM76.1mhz=午後1時から5時)で2時台にゲスト出演します。残るライヴは、ブルーノートは土曜日(30日)、日曜(31日)と月曜(1日)は横浜モーションブルーへ出演。
(2004年10月29日・金・ブルーノート東京・セカンドセット=ファータイル・グラウンド・ライヴ)
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