静寂。
マイケル・フランクスのことを語らせたら日本でこの人の右にでるものはいないというカニ大先生とDJオッシーに、「そのライヴに行くから絶対に来なさい」と強力に誘われ、台風真っ只中、青山に出向いた。
ゆったりとしたサウンドと、けだるいヴォーカル。いわゆる都会的に洗練された日本で言われる「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)」の雄、マイケル・フランクス。まさに嵐の中の静寂が会場を覆う。どこまでもマイペースのフランクスは、自身の軸を決してぶらすことはない。絶対に歌い上げないささやき系の声は、今で言うところの癒し系。彼の歌声を聴いていると、外の嵐のことなどすっかり忘れる。
「この曲は僕が自分の息子のために書いた曲。その頃6歳だった息子は今、34歳だ」(観客席から若干の笑い) そう言って歌い始めたのが「ホエン・ザ・クッキー・ジャー・イズ・エンプティー(クッキーの箱が空のとき)」。78年のアルバム『バーチフィールド・ナインズ』に収録されている作品。クッキーがなくなると、子供が不機嫌になるといった普通の家庭によくある日々の一ページを描いた曲だ。28年も前の曲なのかあ・・・。
この作品に限らず、フランクスの作品は、現象への観察が鋭く、描写が実にうまい。サックス奏者をフィーチャーした「レディー・ウォンツ・トゥ・ノウ」(アルバム『スリーピング・ジプシー』77年)あたりも独特の世界を描きつつ、ジャジーなサウンドはしっかりした骨格を作る。フランクスがピアノのチャールズ・ブレンジングに次に歌う曲を指示する。事前のセットリストはそれほどなく、自然なのりで曲を決めているようだ。
「83年にでたアルバム『パッションフルート』からの作品を一曲やります。ちょうどデイヴ・グルーシンとのライヴにやってきて東京のホテルオークラに滞在していました。結婚記念日という日で、そのホテルの部屋で書いた曲です。『レイニー・ナイト・イン・トウキョウ』」 台風が来て、外は雨の東京にぴったりの一曲。詩人は世界を旅すればするほど、いい作品が書ける。ここで雨の効果音をだす棒状のようなものが登場した。これはいい。となりのオッシーに、「あれうちらも番組で使おうよ」とささやいた。「いいですねえ」
アンコールだけは毎回決まっている。もちろん彼の最大のヒット「アントニオ・ソング」。ひときわ大きな拍手が巻き起こった。
1944年9月18日カリフォルニア州生まれ。ということは、今年ちょうど60歳、還暦だ。しかし、若い。とても60には見えない。やはり、音楽家は年をとらない。そして、外にどんな大きな台風が来ようが彼には関係ない。彼の歩みになんら変化はない。
Michael Franks Setlist 2004.10.20 Second Set
show started 21:35
01. Tell Me All About It
02. Don’t Be Blue
03. When I Give My Love To You
04. Monks New Tune
05. In The Eyes Of Storm
06. When the Cookie Jar Is Empty
07. My Present
08. Island Life
09. Lady Wants to Know
10. Rainy Night in Tokyo
11. Popsicle Toes
12. Monkey See – Monkey Do
Enc Antonio’s Song (The Rainbow)
show ended 22:57
ブルーノート東京のウェッブ
http://www.bluenote.co.jp/art/20041018.html
マイケル・フランクス・オフィシャル・ウェッブ
http://www.michaelfranks.com/
(2004年10月20日・水、ブルーノート東京=マイケル・フランクス・ライヴ)
ENT>MUSIC>LIVE>Franks, Michael