NO726
2004/07/31 (Sat)
Harlem Nights III: Bring Your Cake For Lonnie's Birthday
伝統。

ハーレムというより、どこか南部の小さなクラブあたりで行われる黒人バンドが、昔懐かしのソウルヒットをこれでもかこれでもかとやって、観客を圧倒的に楽しませるエンタテインメント。そんな印象を持ったライヴ・イヴェントだ。日本での知名度はそれほどないにもかかわらず、横浜ランドマークのホール(収容人数約350)で行われるライヴ6回はほぼ売り切れだというから、びっくりだ。しかも、観客層がふだんいわゆるソウル系のライヴに来る人たちとちょっと違っている。年齢層も幅広く、親子での参加も多く見受けられる。告知は、若干の新聞とホームページなどとクラブなどへのフライヤーの配布程度で、おそらくリピーターの人たちが多いのだろう、という。

10年前の1994年に第1回が、そして、昨年第2回が開かれ、今年で3回目になる『ハーレム・ナイト』。自ら「ハーレムのプリンス(貴公子)」と言うロニー・ヤングブラッド(サックスとヴォーカル)を中心に、女性ヴォーカルにミッツィー・ベリー、そして、タップダンサー、オマー・ア・エドワーズらが繰り広げるエンタテインメントショウだ。

セットリストをご覧いただければわかるように、ソウル、R&B、ゴスペル、ブルーズといわゆるブラック・ミュージックの歴史がコンパクトに凝縮されているライヴだ。1部が71分、2部が80分とヴォリュームもたっぷり。

おもしろかったのは、第1部で前日レディー・キムも歌っていた「ホワット・ア・ディファレンス・ア・デイ・メイクス」と「サマータイム」が歌われていたあたり。2日続けて、これらを違うヴァージョンで聴くとは思わなかった。

タップダンサーを見て、セヴィアン・グローヴァーのほうがもっとかっこいいなあ、などと思っていたら、なんとその弟子で、ヒットミュージカル『ノイズ&ファンク』にも出演していた、という。雰囲気が似ていたのだ。もちろん、彼のタップダンスもなかなかのものだ。

休憩をはさんでの第2部は、歌われる作品にレイ・チャールズのものが3曲、さらに、「ニューヨーク・ニューヨーク」、そして、ま、ま、「マイ・ウェイ」まではいり、かなり日本向けの選曲で、単純に楽しめた。

サザン(南部)の香りが漂うそのショウは、とてもフレンドリーで温かみと楽しさにあふれるもの。こういうショウをやってくれるなら、別に有名なアーティストでなくても、まったくかまわない、という気にさせられる。

最後は「ホワッド・アイ・セイ」を、ロニーとミンツィーの歌にオマーのタップダンスを含め、さらに途中には「シャウト」のフレーズなどもいれ、大盛り上がりだ。

ライヴが終るやいなや、メンバーたちはCD即売とサイン会のために、入口にでてきた。それを見て、かつて本牧にあったアポロ劇場でのアーティストたちのサイン会を思い出した。こういう小さな会場でのライヴは、フレンドリーな環境なので、こうやってファンとどんどん交流するのはいいことだと思う。そうした小さな積み重ねが次回の公演へつながる。

そして、タオルで汗を拭きながら立っていたミンツィーさんとちらっと話すことができた。「あなたは、何歳頃から歌っているのですか」 「5歳からよ。それ以来ずっと歌いつづけてるわ」 「最初は教会で」 「そう、もちろん」 「たくさんゴスペルを歌ったんでしょうね。ゴスペルのレパートリーは何百曲とあるのでしょうね」 「オオ・イエー〜〜。なんでも歌えるわ。影響を受けたシンガー? たくさんいる。サラ、エラ、アリーサ、(何人かゴスペルシンガーの名前を列挙したが、忘れてしまった)・・・」 彼女は今、フロリダ州のマイアミから約2時間のところの街に住んでいるという。そして、小さな彼女(身長150センチ弱)が胸を張って言った。「わたしは、何でも歌えるわ」

楽屋に行って、ロニーと話す機会があった。開口一番彼は言った。「オレがやっているのは、伝統的なソウル、伝統的なR&B、伝統的なジャズ、伝統的なゴスペル、伝統的なブルーズ・・・。そうしたものをみんなミックスして、みんなに見せるということだ。今、若い連中はヒップホップ、ラップを聴くだろう。だが、それはこういう音楽をルーツに持っているんだ。だからそういう新しい音楽を聴いている連中に、元々はこういう音楽がそこにあったんだよ、ということを教えるのがオレの使命なんだな。わかるか」 充分、わかります。

「サックスと歌は、どちらを先に始めた?」と聞いた。すると「サックスだ」との答え。「なぜ?」 「母親がルイ・ジョーダンのレコードを好きで集めててね、その母親を喜ばせるために、サックスを吹くことにしたんだよ(笑)」

そして、彼もありとあらゆる音楽を聴く。ジョン・コルトレーン、ジュニア・ウォーカー、エルヴィスもビートルズも。ジェームス・ブラウン、ジャッキー・ウィルソンなどさまざまなブラックミュージックのアーティストたちのバックも勤めた。ハーレムの名物店「シルヴィアズ」で22年間演奏していた。明日(8月1日)が、彼の63歳の誕生日になる、という。1941年生まれだ。そして笑いながらこう言った。「日曜日には来るかい? 来るなら、ケーキを持ってきてくれ!」

関連ウェッブ。
http://www.landmark.ne.jp/index_event_hall.html
まだ31日と1日にショウがあります。


Setlist
show started 19:01

01. Take The A Train
02. Way Back Home
03. What A Difference A Day Makes
04. Summertime
05. Teach Me Tonight
06. Stormy Monday
07. Amazing Grace
08. Oh Happy Day
--Omar Edwards--
09. Precious Love (ACappella)
10. Papa Was A Rolling Stone
11. A Cappella
12. Thugs Mansion
13. Babaloo
14. He's The Wiz
show ended 20:22

Second Set

20:36 started

01. See Live Woman
02. Caravan
03. Just A Nobody
04. Joy To Have A Your Love

05. I Can't Turn You Loose
06. The Best
07. Personality
08. Georgia On My Mind
09. Stagger Lee
10. Night Time Is Right Time
11. (Adlib)
12. I Can't Stop Loving You
13. Blueberry Hill
14. New York, New York
15. My Way
16. What'd I Say

show ended 21:56

(2004年7月30日金、横浜ランドマークホール=ハーレム・ナイト、ロニー・ヤングブラッド、ミッツィー・ベリー、オマー・A・エドワーズ・ライヴ)

ENT>MUSIC>LIVE>Harlem Night, Youngblood, Lonnie / Edwards, Omar A / Berry Mitzy


Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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