NO.684
2004/06/20 (Sun)
Everybody Can't Stop Loving Ray
葬儀。

11日・金曜日(日本時間12日土曜日)、ソウルマンを送る儀式がおごそかにロスアンジェルスのファーストAME教会で行われた。スティーヴィー・ワンダー、B.B.キング、ウィリー・ネルソンら多くの友人たちがスピーチをし、歌い、ウィントン・マルサリスがトランペットを吹いた。

レイ・チャールズの息子のひとりロバート・ロビンソン・サー司教はこう語った。「父の人生は日曜朝のお祈りと土曜夜のパーティーに匹敵します。今は、泣く時(「クライング・タイム」=チャールズのヒット曲のひとつ)かもしれません。しかし、手を叩いて、足を踏み鳴らして神を賞賛してください。私たちにレイ・チャールズを与えてくれた神に対して」と語った。

このスピーチに教会内の人々だけでなく沿道でこれを聞いていた多くの一般の人も熱狂的に反応した。

ローリング・ストーンズ、ヴァン・モリソン、アイス・キューブ、オークリッジ・ボーイズ、ビル・クリントンなどからの献花、メッセージがあふれた。

チャールズの友人であり女優でもあるシスリー・タイソンはこうスピーチした。「チャールズの力強かったところのひとつは、視力なしに人生の価値を見ていたところです。レイに代わる人物は決していません。彼の暗闇を通して、彼は私たちの人生に光を与えてくれました」

B.B.キングはチャールズの家族への献身についてのスピーチを語りきるのに大いに苦労した。彼の目の前にはその家族たちが座っていたからだ。チャールズの長年の友人であるキングは途中で何度も感極まり、そのことへの許しを乞った。すると、客席からは「あなたの味方よ、BB」「ゆっくり時間をとって」といった声がかかった。キングは、彼がチャールズとポーカーをやったことを話した。しかし、キングはなんどやっても勝てなかった。ついにキングはその謎を知った。そのカードには盲人用の点字がついていたのだ。そして、キングは強い声でギター片手に「プリーズ・アクセプト・マイ・ラヴ」を歌った。

多くのスピーチが、チャールズのユーモアのセンス、人となりを称えた。ウィリー・ネルソンは、こんな逸話を披露した。「私はチャールズとよくチェスをやったものだ。でも、いつも彼は私を負かしてしまう。そこで、ぼくは彼にお願いしたものだ。次の試合は、明かりを点けてやろうぜ」 

金曜のセレモニーではチャールズ自身の「アメリカ・ザ・ビューティフル」も教会に響いた。

スティーヴィー・ワンダーは、クリント・イーストウッド、ウィリー・ネルソンらの後に登場。ゆっくりとスピーチを始めた。「私はずっと彼の声に惹かれていました。深い感動を呼び起こされるその声に。彼の声のように世界中の人々に感動を与えるような歌を歌いたいと思いました。そして、彼の音楽を知ってずいぶんたってから私たちは共通点があるということを知るのです。それは、『君はレイ・チャールズへのトリビュート・アルバムを作るべきだ』といわれたときのことです。『なぜ?』と聞きました。『彼は(君と同じく)盲目だからだよ』 私はそれまで彼が盲目であることを知りませんでした。私は、彼の音楽がすばらしい、その点だけでアルバムを作ることにしました」 スティーヴィーは、スピーチの後、「アイ・ウォント・コンプレイン」を歌った。マイクを一本だけ持ち、ストライプのスーツを着たスティーヴィーは同曲の途中からマイクを叩き、ミディアム調のリズムを刻み、教会の参列者の足を鳴らさせた。

イングルウッド墓地へ続く長い車列が出発する前に、マルサリスがトランペット・ソロでチャールズとチャールズの一家を送り出した。そして、それに続いてレイ・チャールズ本人の最新レコーディングでもあるジョニー・マティスとのデュエット曲「オーヴァー・ザ・レインボウ」が流れた。ステージからその曲にナレーションが重なった。「(虹のかなたに)そこが今、彼がいるところです・・・」



Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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