NO.501
2004/01/04 (Sun)
Poet Which Would Give You Courage
勇気。

人々が落ち込んだ時、悲しい時、あるいは、何かにがんばることをあきらめようかと思った時、もうだめかと思った時、そんな時に勇気を与えるのは、音楽だけではありません。例えば、それは映画であったり、小説であったり、あるいはドキュメンタリーであったり、ものすごい生き様のひとりの人間であったり、あるいはそれはほんの一言、誰かがかけてくれた言葉かもしれませんし、どこかで読んだ詞の一遍かもしれません。

スティーヴィーに勇気ややる気をもらったという人が多くいたので、ふとこんなものを思い出しました。スティーヴィーとも非常に深いつながりがあるモータウン・レコード創始者ベリー・ゴーディーの自伝の中にある一遍の詩です。そのタイトルは「イフ(もしも)」というもので、この詩自体はラドヤード・キプリング(1865〜1936)というイギリスの作家が書いたものなのですが、ゴーディーはこれを姉から「読んでおくといいわよ」と言われて、初めて目にします。そして、普段はほとんど本など読まないのに、なぜかこの詩だけは目を通し、その内容に感銘を受け、以後暗記するほど気に入ったのです。

一番のポイントはこのあたりに集約されます。

「もしも、お前が自分の気力と神経と体力がなくなってしまった後も、それらを振り絞ることができるのであれば、 そして、それらに『頑張れ!』と言っている意志以外何もないお前が、頑張ることができるのであれば、(中略) もしも、過ちの許されざる厳しい1分を、60秒間の全力疾走で長距離走の如く見事に完走できるのであれば、 地球はお前のものだ。そして、その中にあるすべてのものも。 そして、お前は男になるのだ、私の息子よ! 」

つまり、最後の最後、もう力尽きたとしても、さらにもし、そこでもうひとふんばりすれば、地球はお前のものになる、お前は男になる、というかなりの勇気付けの言葉です。

ゴーディーは、この後、一時期ボクサーとして活躍しますが、初めての試合の時だったか、たった3分をものすごく長く感じました。そして、もう負けそうだと思った時、もう体が一歩も動きそうにないと思った瞬間、この暗記していた「もしも」の詩を思い出すのです。

このもうひとふんばりというのは、あらゆる面で言えます。今やっている仕事がうまくいかない、人間関係がうまくいかない、やることなすことうまくいかない、スポーツなどで試合をしていて負けそうだ、そんな時、この「もしも」です。

全文 をご紹介しておきます。訳が固いんですが、すいません。もう8年も前のものになります。ヴァージョンアップした訳を出さないとだめかもしれませんね。あと、そうそう、詩は書いた人のものではない、それを必要とする人間のもの、でしたね。

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「イフ(もしも)」 (ラドヤード・キプリング)


もしも、誰かに非難されたお前が、冷静さを失いそうなときにも、冷静でいられれば、
もしも、すべての人間がお前を疑っているときにも、自分自身を信じることができ、お前を疑った連中を許すことができるのなら、

もしも、お前が待つことに飽くことなく、待てるのなら、
あるいは嘘をつかれても、嘘とかかわらなければ、
あるいは、人に憎まれても、人を憎まなければ、
そして、あまり気取らず、知ったかぶりをしなければ、

もしも、お前が、夢を見ることができ、そして、その夢に支配されることがなければ、
もしも、お前が自分自身で考えることができ、そして、考えることが目的とならなければ、
もしも、お前が栄光と惨劇という名の虚像と遭遇でき、そのはかなき虚像を同じように扱えるのなら、

もしも、お前が話してきた真実を、悪者が、愚か者をわなにかけるために、ねじ曲げて語るのを聞くことに我慢できるのであれば、
あるいは、お前が自らの人生を賭けて作りあげてきたものが壊されるのを見たとき、身をかがめてそれらを使い古した道具で作り直すことができるのであれば、

もしも、お前が、膨大な勝利の積み重ねをたった一回のコイン・トスの結果と引き換えるというリスクを背負うことができるなら、
そして、それに負けて、その負けについて一言も不満を漏らさず、まったく最初からやり直すことができるのであれば、
もしも、お前が自分の気力と神経と体力がなくなってしまった後も、それらを振り絞ることができるのであれば、
そして、それらに『頑張れ!』と言っている意志以外何もないお前が、頑張ることができるのであれば、

もしも、お前が自分の美徳を保ちつつ、民衆と話をすることができるのあれば、
あるいは、庶民の感覚を失うことなく、王様とともに道を歩むことができるのであれば、
もしも、お前の敵と愛する友人のどちらもが、お前のことを傷つけることがないのであれば、
もしも、お前にとって、あらゆる男が価値があり、重要であり、しかし、重要すぎるということがなければ、

もしも、過ちの許されざる厳しい1分を、60秒間の全力疾走で長距離走の如く見事に完走できるのであれば、

地球はお前のものだ。そして、その中にあるすべてのものも
そして、お前は男になるのだ、私の息子よ!
              
『モータウン、わが愛と夢』 =ベリー・ゴーディー著・吉岡正晴訳=東京FM出版、38ページより)

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では、この詩を、この詩を必要とする人に捧げましょう。

ENT>POET>Kipling, Rudyard

Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA
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