NO.406 |
2003/10/06 (Mon) |
I Ate Chicken With James Brown (Part 1) |
---|
2日(木曜)のライヴが終わった後、勝本氏と「どうする?」という話になり、「まあ、とりあえず、ホテル行きましょうか」ということになった。一足先にホテルに向かい、入口近辺のコーヒーハウスでお茶しながら、ミスター・ブラウンの帰りを待つことにした。しばらくすると、ご一行が戻ってきた。するとブラウンがこちらを見つけ、近寄ってきた。ひとことふたことあり、なんとそのコーヒーハウスで軽く飲もうということになった。まあ、予想外の展開というか。かなり焦った。 こちらサイド、ブラウン・サイド(ミスター・ブラウン、トミー・ブラウン=奥さん、社長、マネージャー)で12人くらいのグループでお茶をする。席は大きな丸いテーブルに全員が座る形で、トミー、ミスター・ブラウン、勝本氏、そして、僕。で、勝本氏の言うことを僕が訳して伝え、その返りをまた日本語に訳すという通訳状態になる。 だいたいが、昔話になる。「30年前、君たちはもっと若かったな。オレは君たちが成長していくのを見てるからな。30ロング・イヤーズ・・・」というミスター・ブラウン。トミーやスーパーフランク社長(白人の長髪の人物で、ステージで最後にブラウンと一緒に踊った人)に、「彼とは30年前から知ってるんだ。彼はオレそっくりに踊れるんだよ」などと話している。社長はこの1年くらいで、ブラウンのマネージメントをてがけるようになったので、来日は初めて。ブラウン宅には勝本氏とミスター・ブラウンの30年前のツーショットの写真が飾られている。だから、いつでも、ミスター・ブラウンはその話を持ち出す。「昔は、おまえはこ〜〜んな大きなアフロヘアーだったよな。ははは」 「シャンペーンでも飲むか?」とミスター・ブラウン。「いやいや、おかまいなく」と遠慮する日本サイド。でも、結局頼まれた。(←敬語使い) 少しずつ全員に注がれると、ミスター・ブラウンとトミーが「何に乾杯しましょうか。じゃあ、みんなの健康に」と言い、「かんぱ〜〜い」となった。再び「30ロング・イヤーズ!」 この日、何度この言葉を聞いたことか。 ミスター・ブラウンは「腹は減ってるか? なんでも頼んでくれ。オレのおごりだから」と言う。昔、なぜかその一行にまぎれて一緒になった勝新太郎さんに同じことを言われたのを思い出した。なんだか、一瞬、ミスター・ブラウンと勝さんがだぶって見えた。どちらも、親分肌で、超豪快な人物である。そして、どちらも愛すべき人物であり、一緒にいると「大ファン」になってしまうようなキャラクターの持ち主だ。 ミスター・ブラウンたちは、若干おなかが減ったのかフードをオーダーする。どうやらフライド・チキンをオーダーしたようだ。ミスター・ブラウンが今2歳の息子の写真を見せてくれる。トミーが言う。「2001年6月11日に生まれたの」 「名前は?」 ミスター・ブラウンが答える。「ジェームス・ブラウン・セカンドだ」 「オ〜〜、イエ〜」 それから、また別の写真を見せてくれる。「うちの池で釣れた魚だ」とミスター・ブラウン。どうやら、バスらしい。「釣りはなさるのですか?」「う〜〜ん、習っているところかな。池に、どんどん(魚を)放ってるんだ」 僕は誰もが思う疑問を尋ねた。「今日のステージを見て、とても70歳には見えませんでした。本当にお若いですねえ。その若さの秘密はなんなんですか」 ミスター・ブラウンは僕の目を見て、黙って人差し指で天井を指した。そして、いつものように訛りの強い英語で答えた。「神だよ。神がオレに力を与えてくれるんだ」 横に座っていたトミーが、「先日、日本で一番長寿の女性が亡くなったんですって」と話をふってきた。「ああ、そういうニュースがありましたね」「日本人はみな長寿なんでしょう?」 「え〜確かに」 そこで、僕はミスター・ブラウンが昔、自分は200歳まで生きると言っていた発言を思い出した。「ミスター・ブラウン、その調子だったら、本当にあと何十年もライヴができますね。僕はあなたが昔おっしゃっていた200歳まで生きるという言葉が大好きなんですよ」 (正確には、ジェームス・ブラウンは、「オレは200歳マイナス1日まで生きるんだ」と発言していた。それだけ長くファンクの伝道師を続ける意欲を示したものとして受け取られていた。僕はそれを単純に「あなたは200歳まで生きると言っていた」ということを持ち出した) 「よ〜く覚えてるな。(笑) すばらしい記憶の持ち主だな。だがな、オレは君たちに200歳まで生きて欲しいと思っている。それで、オレは200歳マイナス1日だけ生きるんだ。そうすれば、君たちのようなすばらしいフレンド(友達)の死を見ずにすむからな」 「オオ、イエ〜」 ほとんど、ゴスペルの説教の相槌みたいになる! (こんな会話、テープに取りたかった!) ミスター・ブラウンのその言葉を日本語に訳すと、座っていたみんなから思わず拍手が巻き起こった。 しばらくしてチキンがやってきた。僕たちは遠慮して、フードはオーダーしなかった。というか、とてもミスター・ブラウンの前で何かを食べるという余裕がなかったのだ。(笑) ミスター・ブラウンはかなりの量の塩と胡椒を振りまく。すると、そのチキンの乗ったプレートをさして、「どうだ?」という。「だいじょうぶです、ありがとうございます」と答えるが、ミスター・ブラウンがフォークにチキンを刺し、こちらに手渡してくれる。まず勝本氏が食べる。「あちっち」と勝本氏、落としそうになる。次に僕に手渡される。ミスター・ブラウンじきじき手渡しのチキンをじっくり味わう。しかも、テーブルの一番向こう側までミスター・ブラウンはわざわざ歩いてチキンを持っていったのだ。もちろん、その彼は大感激だ。 「どうだ?」 「ありがとうございます。とてもおいしいです」 「そうか、じゃあ、君はこんな曲が書けるんじゃないか。 I ate chicken with James Brown(オレはジェームス・ブラウンとチキンを食べた)」 「オオ、イエ〜。アイ・エイト・チッキン・ウィズ・ジェームス・ブラウン。いいタイトルですね」 僕がそのタイトルを2−3度繰り返して言う。 「う〜む、I ate chicken with James Brown, Papa's got a brand new bag, おおお、メイクセンスするな」とミスター・ブラウン、ご満悦。この並びがなんでメイクセンス(理に適う)なのか、どうも英語力の乏しい僕にはよくわからないのだが・・・。(おそらく英語ができてもわからないのだろう) でも、きっとミスター・ブラウンの中ではメイクセンスしているのだ。 ジェームス・ブラウンの曲のタイトルは、ちょっと日本人にはわかりにくいタイトルが多い。直訳しても意味不明な作品もある。おそらくアフリカン・アメリカンにとってはよく使われるスラングなどで直感的にわかるのだろうが、われわれ外国人には意味が辞書にでていないために理解不能なものもあるのだ。またミスター・ブラウンがストリートの言葉をたくさん使っているためにわれわれにはなかなかわからないものもあるのだと思う。それはさておきミスター・ブラウンが曲のタイトルを決める時ってこんな風に決めるのかな、とふと感じた。ミスター・ブラウンが2−3度「I ate chicken with James Brown, Papa's got a brand new bag」と言うと、それだけで、レストランでさえもソウル・ジェネラルがダダダッダと演奏を始めそうな空気になった。 「ミスター・ブラウンとディナーを食べたよ」と友人に自慢気に話すと「何、食べたの?」と返ってきた。「僕はミスター・ブラウンとチキンを食べたよ」と僕。彼は一言言った。「それこそ、ほんとのファンキー・チキンだな」 +++++ ENT>MUSIC>INT>BROWN, JAMES |
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA |