NO.358 |
2003/08/19 (Tue) |
Standing In The Shadows Of Legacy: Finally, Lalah Sings... |
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今回のライヴは、選曲がいい。マーカス・ミラー、レイラ・ハザウェイ、そしてテイク6。マーカス・グループが約50分ほど演奏した後、レイラはいきなり、すたすたと舞台に登場。その一曲目はなんと「ジェラス・ガイ」だった。う〜〜ん、そうきたか。 ジョン・レノン作、ダニー・ハザウエイのライヴ盤で歌われる佳曲である。やはり、 ダニーで聴きなれた作品をその娘で聴くというのは、感情的になるものだ。はっきり言ってレイラのこの一曲だけでも、聴きにきた甲斐はあったとさえいえる。そして、続いて歌われたのが、なんと、アレサの大ヒット「デイドリーミン」。わお! なんでまた、こんな曲を! ほんとに、レイラの声は低くて太くて、いい。こういう曲にもぴったりだ。 そして、テイク6の登場。マーカス、レイラ、テイク6は、それまでにも充分なつながりがあって、もはやファミリーみたいなものだから、コンビネーションとか文句ない。「メリー・ドンチュ−・ウィ−プ」(トラディショナル)、「グランドマズ・ハンズ」(ビル・ウィザース)、さらに「ラヴズ・イン・ニード・オブ・ラヴ・トゥデイ」(スティーヴィー・ワンダー)と続く。このあたりは、いつもの感じだが、なんと言ってもバックにマーカス&ヒズ・グループがいて、相当タイトな演奏をつけるので、かっこいい。 テイク6ヴァージョンも見事な「ピープル・ゲット・レディー」(カーティス・メイフィールド&インプレッションズ)、「テイキン・イット・トゥ・ザ・ストリート」(ドゥービー・ブラザース)と続く。「ピープル・ゲット・レディー」なんか、完全にテイク6のものになっている。後者は、途中からゴスペル調になっていく。そこにはテイク6の声が圧倒的にうずまく。それはまさに至福の声の洪水だ。途中から入るバンド一無愛想なサックス奏者ロジャー・バイアムの職人的サックスソロが実にクールだ。彼はいい味だしている。もちろんオマー・ハキムのドラムスも最高、ギターのディーン・ブラウンもいい。完璧なバンドである。 いったんはけた後アンコールの1曲目。なんと、「イフ・オンリー・フォー・ワン・ナイト」と来た! ブレンダ・ラッセル作のルーサー・ヴァンドロス歌の名作である。マーカスはここでクラリネットよりもさらに長い初めて見るような管楽器を使っていた。途中でクラリネットに持ち替えるが、そこで、トランペットのマイケル・スチュワートとちょっとしたバトルを繰り広げる。そして、曲が終わりマーカスが「ルーサーの歌で知られる『イフ・オンリー・フォー・ナイト』、彼に捧げます・・・」とアナウンスした。さらっとした紹介だけにじわんとくる。 ルーサーがブレイクしたきっかけが『ネヴァー・トゥ・マッチ』(81年)、それをプロデュースしたのが、誰あろうマーカス・ミラーである。マーカスがやるルーサーの曲というところに大いなる意義がある。そして、アンコール2曲目はレイラが前にでてきて「ホエン・ライフ・ワォズ・ロウ」。あのジョー・サンプルのアルバム『ソング・リヴズ・オン』に入っている名曲だ。CDもよかったが生歌も何度聴いてもいい。本当にレイラは自分の道を見つけたとつくづく思う。 たまたま座った席が一番前だった。そこで、なぜかレイラとものすごくたくさん目があったような気がした。というか、レイラが僕の目を見て歌っているような気になった。目があっていたのは確かな事実だ。彼女は半分は僕のほうを見て、半分は逆側を見る。なんでずっと見つめられるのだろうか。ひょっとして彼女は僕に気でもあるのだろうかと思ってどきどきした。(このあたりが単純というか=苦笑) しかし女性歌手にしっかり目を見られて歌われたことはなかったように思う。よく男性シンガーが女性に向かって歌うシーンは目撃するが。レイラはいつもどこかに焦点を定めて歌うのかな。それとも僕を知っていたから見ていたのか。ただ誰でもよかったのか。確かめないと・・・(笑) それはさておき、その次に歌われた曲に完璧にノックアウトさせられた。バックバンドのイントロだけで、ぐわ〜〜と来た。ステージにはもちろんテイク6もいる。レイラがステージ中央でマイクを持っている。イントロから最初のフレーズへ。「hang on to the world...」だ。もうこれだけで胸一杯である。その曲は「サムデイ・ウィル・オール・ビー・フリー」である。もちろん、ダニー・ハザウェイの名曲中の名曲だ。ほんとだったら泣いてもいいシーンだ。 しかし、この日はライヴが始まったのが午後1時。急遽決まった追加公演。しかも日曜日なので僕は個人的には、このあとすぐインターFMに行かなければならない。4時から生放送なのだ。この時点ですでに3時を回っている。よってあんまり落ち着いていられないのだ。それと、会場が寒かったせいか、あるいは、睡眠不足のせいか体調は万全ではなかった。まあ、言ってみれば、ふだんナイターばかりに出向いているのに、この日はデーゲームなので調子よくないのだ。やっぱりライヴはナイターに限る。そう、ナイターのホームゲームがいいな。昼の1時からライヴなんて、オープンエアのレゲエのライヴだったらいいのだが。というわけで泣くまでにはいたらなかったが、これが万全の調子で超集中して聴いていたら、どうなったか保証できない。 というわけで、「サムデイ・・・」に泣くことはなかったが、かなりくるものはあった。レイラはいつの日にか(サムデイ)父の曲にチャレンジするだろうと、99年、2000年に彼女のライヴを見たときに確信というか期待をもっていた。このことは、『ソウル・サーチン』のあとがきに書いた。それから3年。いよいよかな、という思いがこみ上げてきた。 レイラは、やっている音楽こそちょっと違うが、歩み方にナタリーと似ている部分がある。ナタリーがついに「アンフォーゲッタブル」をやったように、レイラがついに「サムデイ・ウィル・オール・ビー・フリー」を歌ったのだ。しかもコーラスが、バックコーラスがテイク6にマーカスである。こんなぜいたくがあるだろうか。 これ一曲だけでも、この日のライヴの価値はあった。(っていうのが、もう2曲目です) そして、もう一曲テイク6が「ドント・ギヴ・アップ」(ピーター・ゲイブリエル)を歌う。ここではトーキングベース、アルヴィン・チアとマーカスのエレキベースの壮絶なバトルが繰り広げられた。これも見ものだ。 ショウが終わってすぐに僕は会場を後にした。本当はもっと余韻を楽しみたかったのだがしょうがない。今年見たライヴの中で1曲を選べといわれたら、レイラのこの日の「サムデイ・ウィル・ビー・オール・フリー」にするだろう。レイラの次のアルバムは一体どうなろうのだろうか。きっと彼女のキャリアを決定付ける「キャリア・アルバム」になるのではないだろうか。そんな予感が強く強くしてくる。レイラがついにダニーの影に足を乗せている。レガシーの影の上に、そっと片足を乗せている・・・。そして、今回レイラがこれを歌うところを見る人たちは、同時進行のドキュメントの、歴史の目撃者だ。 (2003年8月17日・日曜ファースト・東京国際フォーラム・ホールB7=マーカス・ミラー、レイラ・ハザウェイ、テイク6) (このほかショウは8月18日から20日まで。ただしテイク6がでるのは18日と20日。レイラはすべてに出演。19日はケニー・ギャレットが出演。また週末にはマウント・フジ・ジャズ・フェスにもでます) オフィシャルhp http://www.7daysjazz.jp/ http://mtfujijazz.com/index03.html ENT>MUSIC>LIVE>MILLER, MARCUS, HATHAWAY, LALAH, TAKE6 (タイトル: レガシーの影) |
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA |