NO.233 |
2003/04/23 (Wed) |
Tears of God |
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今日ライヴがあるので行こう、と友人に誘われて足を運んだ西麻布アムリタ。月曜なのにけっこう混んでいた。まあ、そのライヴはうるさくて心地よくなかったのだが、そこでボストン生まれのシンガーという23歳の男性を紹介された。日本人だが母国語が英語だという。 マーヴィン・ゲイとかスティーヴィー・ワンダーが好きだというので、カウンターの前で立ち話になった。「やっぱり、ホワッツ・ゴーイング・オンとかね。(自分も)歌いますけど、マーヴィンみたいにはとうてい歌えないですよ。ええ、ダニー(・ハザウエイ)のライヴ盤はすごいですよね。ダニーも大好きです。あの曲は、マーヴィン以外だとダニーくらいでしょうか。あのライヴの『ユーヴ・ガッタ・ア・フレンド』ね、すごいですねえ」 マーヴィン→ホワッツ・ゴーイング・オン→ダニー・ライヴという話の流れは、もう完璧に定番だ。どこでも誰でも、初対面でも、ある程度聞いてる人だとこうなる。それは話の共通項。 彼は他にもたくさん好きな曲があるが、スティーヴィーの「アズ」が好きだと言った。いずれも彼が生まれる前の作品ばかりだ。そんな彼に、曲を聴いたときの風景が記憶にある曲はないか、尋ねた。するとこんな話をしてくれた。 ちょうど彼がボストンに住んでいる頃のことだった。友人を訪ねてニューヨークに行こうとしていた。そのときは、飛行機ではなく、往復約60ドルのグレイハウンド・バスでニューヨークに向かった。飛行機だと高いので学生の彼がバスで行くのは珍しいことではなかった。 彼はCDウォークマンにスティーヴィーのアルバム 『ソングス・イン・ザ・キー・オブ・ライフ』 をいれていた。2枚組みのCDで、そのときはディスク2がかかっていた。1曲目の「イズント・シー・ラヴリー」が流れた。ニューヨークまで夜行バスでおよそ4時間半の旅。ボストンの街からバスが遠ざかっていくと、ちょうど街の光が地平線と重なるあたりで、ぼんやりとろうそくのように見えた。まさにそのときかかったのが、2曲目の「ジョイ・インサイド・マイ・ティアーズ」だった。 それまでにも何度かアルバムは聴いていたが、真剣に集中して聴いたのはこのときが初めてだった。「イズント・・」がカットアウトで終わり、すぐに「ジョイ・・・」の重厚なイントロが始まる。なんとも言えぬ感情が彼の中に巻き起こった。バスのエンジン音もほとんど聞こえず、ヘッドフォーンからスティーヴィーの声が直接彼の耳元にささやいた。夜の国道を走るバスは一定のリズムを刻み続け、少しだけ彼の体に振動を与えていた。 曲が流れる間、彼は無意識のうちに右手も左手もきつく握りこぶしを作っていた。車窓の向こうに見えるろうそくのような光がゆらゆらと揺れる。6分29秒の夢のような曲が終わって手を開いてみると、じっとりと汗をかいていた。一体何が起こったのか、彼にはわからなかった。だが、そのときの光の風景と「ジョイ・インサイド・マイ・ティアーズ」は見事に融合していた。 「『イズント・シー・ラヴリー』は、僕はまだ子供もいないので、それほど感じるものはなかったんです。でも、この『ジョイ…』はものすごく衝撃でしたねえ。あの時の景色は今でもよく覚えていますよ」 スティーヴィー・エイス・ワンダーはこう歌う。「『でもね』という言葉は、なにかとても大事なことを言うための言い訳だと思うんだ。だから僕はできるだけ、『でもね』とは言わないようにしている。でもね、僕の心の中に今思っていることはなんとしてでも君に知ってもらわないと。ベイビー、君が僕の人生に歴史を与えてくれたんだ。君は、僕の涙の中に喜びをもたらしてくれる。君は誰もが不可能だと思ったことを成し遂げたんだよ。つまり、僕の涙に喜びを与えてくれたんだ」 「明日という日は、昨日という日が足かせになっている人のためにある。永遠の瞬間は、はるかかなたから、しかも、めったに訪れない。だから君がもたらしてくれたその喜びについて君にはっきり言っておかなければならない。君こそが僕の人生に歴史を与えてくれた、僕の涙に喜びをもたらしてくれたから」 この曲を聴いて、彼は何を感じたのだろうか。バンドが出す雑音の中でしばらく考えてこう言った。「神は女性だってことでしょうか。すべて。子供を産むこと、母としての役目、やさしく人を包み込むということ。神は女性なんだな、と思いました」 雑音と神の音の話。そのあまりの落差が妙に印象に残った。 ひょっとしたらボストンからの夜行バスの中で、神の声がスティーヴィーを媒介として、彼の元に届いたのかもしれない。両手の握りこぶしの汗は、神の汗だったのか。あるいは神の嬉し涙だったのか。 +++++ Joy Inside My Tears Lyrics & Music : S. Wonder I've always come to the conclusion that 'but' is the way Of asking for permission to lay something heavy on one's head So I have tried to not be the one who'll fall into that line But what I feel inside I think you should know And baby that's you-you-you Made life's his * to * ry Cause you've bought some joy inside my tears And you have done what no one thought could be You've brought some joy inside my tears I've always felt that tomorrow is for those who are too much afraid To go past yesterday and start living for today I feel that lasting moments are coming far and few between So I should tell you of the happiness that you bring Baby, baby it's you - you - you Made life's his * to * ry Oh baby, you've brought some joy inside my tears Baby you have done what no one thought could be You brought some joy inside my tears You brought some joy inside my tears You brought some joy inside my tears You've brought some joy inside my tears Baby, baby you have done what no one thought could be He-y, you brought some joy inside my tears Gotta tell you You you you made life's his * to * ry You brought some joy inside my tears you brought you brought you brought some joy inside my tears Baby baby baby you have done what no one thought could be You brought some joy inside my tears You made it baby you made it baby made it made lif's his * to * ry you you you made life's his * to * ry You brought some joy inside my tears You have done what no one thought could be No * body ever thought it would be You brought some joy inside my tears You you you made life's his * to * ry Gotta shout about it baby You brought some joy inside my tears You have done what no one thought could be You brought some joy inside my tears You you you made life's his * to * ry You brought some joy inside my tears You brought some joy inside my tears You brought some joy inside my Tears |
Diary Archives by MASAHARU YOSHIOKA |